エロス

日本映画の感想 『花と蛇』

団鬼六先生による、あまりにも有名な官能SM耽美小説。日活ロマンポルノでも幾度と無く映画化されており、特に小沼勝監督・谷ナオミ主演の74年作品はロマンポルノ史上の名作です。さて、石井隆監督がこの題材をどう料理したのか?

率直な感想。想像していたよりも過激な感じは受けなかったし、むしろカメラワークや照明の出来が素晴らしく、綺麗な映画でした。だから、本格的なSM映画を期待している人にとっては肩透かしを食らうことになるでしょう。痛々しいっていう感じはほとんど皆無で、緊縛・針・蝋燭・刺青といったイベントを美しく見せているため、SMのカタログ的な役割は果たせるだろうと思いますが、そっち系の趣味が旺盛な人にはAVでも見ていたほうがマシ。入門編には丁度いい感じだと思います。まぁ、僕は入門するつもりありませんが。

出演陣。まず、蓮司さん。まぁ、蓮司さんのことですから、あれくらいの変態演技は朝飯前でしょうが、とても95歳のご老人には見えないところが難点でしょうか。エンケン、山口祥行は無難なところ。杉本彩は、やっぱりどう考えたってSの印象があり、僕には陵辱を受けているというよりか、積極的に責めを受けている感じでどうにも馴染めませんでした。公開当時、杉本自身は「私にしか出来ない役」と豪語していたがそりゃそうでしょう。今の時代、前張りなしであそこまで脱ぎっぷりの良い人は他に居ないと思います。以外に良かったのは、野村宏伸。妻を売ったことで、良心の呵責に悩む役どころを好演。「教師びんびん」から随分と大人になったもんです。あと、未向(みさき)は良かったです。スタイル抜群で、アクションもしなやか。おまけにセリフ回しもはっきりしていて聞き取り易い。ピエロ役に伊藤洋三郎。テンション高かったなぁ・・・評価の割れるところだと思いますが、迫真のコスプレ、異常なテンションで映画全編を乗り切ったところ、僕的には好みです。

石井監督の演出は、意外と美しくて、そして単調で残念。別に、本格的SMが見たかったというわけではないのですが、SMを石井流に味付けするとどうなるのか?と、ちょっと自分の中で過激、または斬新なものを期待していただけに残念度が高かったです。まぁ、SMという行為そのものが一般的な映画でも悲劇的に、あるいは喜劇的に捉えられているだけに、真正面向き合って真面目に捉えることは実はかなり難しいのですが。まして、映画なのだからAVとは異種の要素も求められるわけで・・・。

尚、石井監督は再び杉本彩主演で
『花と蛇2 パリ/静子』(2005)という続編も撮り上げています。続編は杉本のパートナーとして変態演じさせたら日本一・エンケンをフューチャリング。より一層、過激度も増したという評判でしたが、やっぱり興味の持てないマニアックな世界は退屈してしまうと思い、僕は未見です。

 『花と蛇』                                   Hana_to_hebi_2
  監督:石井隆
  脚本:石井隆
  撮影:佐藤和人、小松高志、柳田裕男
  音楽:安川午朗
  出演:杉本彩、未向、野村宏伸、
      石橋蓮司、遠藤憲一、寺島進、
      伊藤洋三郎、山口祥行
  (2004、東映ビデオ)

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日本映画の感想 『フリーズ・ミー』

山崎ちひろ(井上)は高校時代、郷里の町で3人の男たちにレイプされる。それから数年後、東京での新しい生活にも慣れ、恋人との結婚を間近に控えた彼女のもとに、以前彼女を犯した男たちが再びやってくる。過去が露呈することを恐れた彼女は、男たちを次々に殺して大型の冷凍庫に押し込んで行く・・・

何やら昭和の時代に逆戻りしたかのようなお話です。しかし、昭和の時代の『天使のはらわた』には確かにあった、ある種のロマンチシズムもこの作品に感じ取ることは出来ません。石井作品の象徴的キャラ・名美の場合は、常に再生し、自立し、立ち向かう姿勢で男達に復讐する。そんな姿から感動を引出しています。で、その傍らにはいつも名美の良き理解者たる村木が居ました。しかし、この山崎ちひろの場合、ゆらゆらと再び男たちに身を任せてしまうだけ。悪い捉え方をすれば「レイプされたことは確かにショックだけど、でもあの味も忘れられない」的な淫蕩な心情でも隠されているのではないか?と勘繰りたくなるほど。
それに守ってあげなくてはいけない立場の彼氏(松岡)が、村木のように女性の良き理解者となっていくのかと思いきや、おろおろと狼狽して逃げて惑うばかり。ちひろも結局は男たちに復讐を果たすのですが、死体はとりあえず冷凍庫へ埋めましょう・・・ってなプロットに果たして必要性やメッセージはあるのでしょうか?ただ単純にスキャンダラスな話題性を振り撒きたいとしか思えないのですが。
まぁ、この作品を見ても女性は嫌悪感を抱くだけだと思います。

井上晴美は、元水泳選手ですから仕方がないかもしれませんが、やけにガタイが良くて、顔つきが凛々しいので、痛々しさや悲しみ、無念さといったものが表現しきれてません。本人の演技力の問題もあるかもしれませんが、明らかにミスキャストでしょう。

 『フリーズ・ミー』                               Freeze_3   監督:石井隆
  脚本:石井隆
  撮影:佐々木原保志
  音楽:安川午朗
  出演:井上晴美、松岡俊介、竹中直人、
      北村一輝、鶴見辰吾、飯島大介、
      伊藤洋三郎
  (2000 ケイエスエス、日活)

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日本映画の感想 『ビジターQ』

家族の崩壊→再生もの。
何か、「家族ゲーム」のようなテイストを持った映画である。しかし、それは基本的なテイストだけであり、この映画でやっていること、それはもう…恐ろしいこと極まりない。あまりにもエスカレートし過ぎのイジメ、援助交際、家庭内暴力、近親相姦、死姦、殺人、母乳(本物)・・・やっちゃたなぁって感じで。デジタルビデオ撮影がまたまた生々しい。

しかし何といってもエンケンである。援助交際する娘、イジメのストレスを家庭内暴力で紛らわす息子を商売のネタにするテレビレポーター。イジメの実況中継、娘とのセックス、同僚を絞殺した後、死後硬直の体を死姦、そしてラストの母乳吸いまで、ちんぽ丸出し大サービスで頑張っている。うーん、これこそ俳優魂。


 『ビジターQ』                                Q_2
  監督:三池崇史
  脚本:江良至
  撮影:山本英夫
  音楽:遠藤浩二
  出演:遠藤憲一、内田春菊、渡辺一志、
      中原翔子、不二子、武藤洵、鈴木一功
  (2001、シネロケット・日本トラスティック)

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日本映画の感想 『六月の蛇』

何日も雨が降り続く六月の東京。りん子は心と健康の電話相談室に勤めている。潔癖症の夫とはセックスレス。でもお互いに愛情が薄れたわけではない。ある日、職場で一本の相談電話を受け取ったりん子。りん子はその相手を励まし、自殺を食い止めることができた。だがそれをきっかけにその男からりん子へのスト-カー行為が始まる。彼女の自慰行為を盗み撮りした写真が送られてきたのだ。その日からりん子の恥辱と恐怖の日々が始まる…。(goo映画より)

塚本晋也のエロスをテーマにした作品。でも、エロいというよりかは痛くて、重い感覚。死を間近に迎えた男女が、欲望の解放とは何かを死の間際にしてようやく悟るという話。二人の主人公(黒沢あすか、塚本監督)にはもう死期が近いということと、日常的性生活においてのハンデを背負っている分、「性」の「生」に占めるウェイトの重さを痛感させられることとなる。
そして「生」が終わりに近づく間際、「性」を解放した主人公はようやく真実の愛に辿りつく。

絶望的イメージに彩られるかのような、見たこともない白黒ならぬ“白青”の映像、そして雨…純粋に美しくて残酷な映像。黒沢あすかの凄みすら帯びた美しさ、塚本監督の俳優としてのうまさ、神足裕司の潔癖さ、石川忠の心情にズシンと迫り来るような精神性の高い音楽…素晴らしい点を挙げればキリがない作品。

この映画のロゴマーク「A SNAKE OF JUNE」。どうでもいいが、感じがキューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』っぽい。
2002ベネチア国際映画祭コントロ・コレンテ部門(主に前衛性の高い映画部門)審査員特別賞。


 『六月の蛇』                                 Snake_june
  監督:塚本晋也
  脚本:塚本晋也
  撮影:志田貴之
  音楽:石川忠
  出演:黒沢あすか、塚本晋也、神足裕司、
      鈴木卓爾、田口トモロヲ、寺島進
  (2002、海獣シアター)

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日本映画の感想 『愛の亡霊』

題名からも想像出来る通り、センセーショナルを振りまいた『愛のコリーダ』の二番煎じ的に作られたものです。従って、この映画も日仏合作で製作されており、本編の冒頭にはフランス語のテロップが付いたりなんかします。
ちなみにエロ描写はコリーダほどではありません、というか基本的には男女の情念に主眼が置かれているので、コリーダに比べるとエロ描写は雲泥の差です。
そのかわり、とにかく素晴らしく美しい映画です。美術・間野重雄、撮影・宮島義勇、音楽・武満徹・・・当時の日本映画界を代表する、これだけの面子がスタッフに揃っているのですから当然といえば当然かもしれませんが。豪華スタッフを従えての大島演出も腰を据えてじっくり見せてくれる感じが良いです。
僕自身はコリーダよりもこっちの方が好きですね。

キャスト陣にも触れておきましょう。
藤竜也と吉行和子の二人に殺害され、幽霊になって出てくる田村高廣はいわゆるステレオタイプの幽霊ではありません。驚かすわけでもなく、呪いをかけるわけでもなく、現世にいたころと変わらぬ姿で、静かに佇むだけの幽霊です。この幽霊の生々しさが、結果として吉行や藤の自責の念を高めることとなり、二人を破滅へと追い込んでゆく過程は、見る側にも心理的恐怖を与え、息苦しさを感じずにはいられません。
次に吉行和子。ほんとはこの当時で40半ばくらいの年齢ですが、どう見たって三十歳くらいにしか見えません。全編に渡りこれでもかと美熟女的色気を振りまく吉行さんはまさにハマリ役と言えるでしょう。
それに対し、藤竜也の20歳前半(実年齢は当時37、8歳)という設定はどう見たって、無理がありまくりです。普通にオッサンですし(笑)
藤の弟役で、頭が弱くていつも発狂しているだけの男は何を隠そう“おすぎ”です。でも実際、映画を見てても全く気付きません。ちなみに、本名の杉浦孝昭でクレジットされています。


 『愛の亡霊』                                Ainobourei
  製作代表:アナトール・ドーマン
  監督・脚本:大島渚
  撮影:宮島義勇
  美術:戸田重昌
  音楽:武満徹
  出演:藤竜也、吉行和子、田村高廣
      川谷拓三、佐藤慶、杉浦孝昭(おすぎ)
  (1978、大島渚プロ・アルゴスフィルム)

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日本映画の感想 『愛のコリーダ』

日本初のハードコア映画としてあまりにも有名な作品。フランスとの合作であります。
原題はフランス語で「官能の帝国」。“コリーダ”は闘牛という意味で、そのまま「愛の闘牛」と直訳すると何だか変な為、「官能の帝国」と銘打たれたらしいです。

「芸術かワイセツか」をめぐって、裁判沙汰にまで発展しました。
日本初公開時は、当時の風潮や規制の厳しさも手伝って、カットされたシーンも多く、また陰部をボカシやモザイクではなく黒丸で覆い隠すという荒技(?)を映倫はやってのけ、これには大島監督も「これは僕の映画ではない!」と、たいそう激怒したらしいです。そして初公開から24年経った2000年に当時カットされたショットを復活、ボカシを最小限に抑え、「これなら僕の作品と言える」と、大島監督自身がゴーサインを出した「愛のコリーダ2000」がリバイバル公開されました。残念ながら今の日本ではまだここまでが限界で、完全なる無修正版コリーダが見たければ、海外版DVDを購入して向こうのリージョンでも対応可能なプレイヤーで見るか、いっそのこと海外まで出向いてしまうか、それしか方法はないでしょう。

とにかくこの映画、藤竜也と松田暎子は初めから終わりまでひたすらセックスばっかりしてます。でもここで描かれるセックスは、愛情の行き着く先としての、結果としてのセックスではなく、あくまで過程としてのセックスです。セックスを超越して得られる愛のかたちとはどういうものなのか?というような深い深い・・・男女の根源的なテーマが内包されています。だから吉蔵と定、二人の間にはセックス以外にお互いの過去を干渉したりなどという余計な過程は一切ありません。観続けていると、そんな二人の姿に段々と圧倒されますが、最終的には疲弊します。二人が果てしなく求め合う意味についてもいろいろと考えてしまいます。「何故、二人はこんなにも求め合うのか?」「先のことは考えているのか?」「定の異常ともいえる懇願、執着ぶりも凄いけど、それに応えるこの吉蔵という男の優しさっていったい何なんだろう?」とか妙に考えさせられてしまいます。

描写そのものについてですが、日本初のハードコア映画といわれても、当たり前にAVがある世代ですからそれほどの衝撃はありませんし、ポルノグラフィーとしてそそられる部分も僕自身ありません。著名俳優の藤竜也が本番をやっているという意味での衝撃は確かにありますが。でも、女性の局部にゆで卵や三味線のバチを挿入するといったアブノーマルなプレイもふんだんに盛り込まれておりまして・・・イヤらしい映画というよりかは、艶かしい(なまめかしい)もしくは生々しい映画といった表現の方が適切なのでしょうか。ちなみに藤竜也は定役の松田暎子や奥さん役の中島葵だけではなく、60過ぎ位のババアとも絡まされて、ちょっと可哀相な気もします(笑)

興味本位で扱われることの多い映画なのかもしれませんが、映画そのものの質もかなり高いです。
製作代表のアナトール・ドーマンとしては、「由緒ある日本を舞台にしたハードコアを作って一発当ててやろう」ぐらいの目論見でしかなかったはずですが、出来上がった代物はハードコアとか猟奇とかそういうものを超越して、充分に芸術として成り立つだけのハイクオリティーを保持していると思います。閉鎖的な室内空間を見事に表現した美術の戸田重昌、尺八や三味線を基調とした三木稔の音楽、定の着る和服の美しさ、画面の構図の美しさ、完璧なロケハンとセット…ほとんどセックスしか描いていないのにも関わらず、強くその作品世界に引きこむ魅力を持ちえているところがこの映画の並ではないところだと思います。



 『愛のコリーダ』                             Colida
  製作代表:アナトール・ドーマン
  製作:若松孝二
  監督・脚本:大島渚
  撮影:伊藤英男
  音楽:三木稔
  美術:戸田重昌
  出演:藤竜也、松田暎子、小山明子
      中島葵、殿山泰司、芹明香
  (1976大島渚プロ・アルゴスフィルム)

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