ピンク映画

日本映画の感想 『13人連続暴行魔』

孤独そうな男が、改造拳銃を自作して13人の男女を殺しまくり、犯しまくる話。

この孤独な男を演じる馬津天三(うまつてんぞう?)なる俳優が凄い。おおよそ『13人連続暴行魔』というタイトルからは想像しえないような、なんというか、ドランクドラゴンの塚地をロン毛にしたような男で、何時もTシャツにつなぎのジーンズにボロボロのチャリンコという冴えない格好で、ひたすら暴行を繰り返していく。しかも、数々の暴行にさしたる理由があるわけでもなく、それはほとんど衝動的、刹那的なモノである。

考えてみると、やっぱりこの映画にも若松孝二の一貫したテーマ、「反体制」みたいなものが息づいていて、理由も前向きもなく暴行を繰り返していく男は、ただ暴行を繰り返しているようで、実は社会へ何らかの制裁を加えているのだ、という気にさえ思えてくる。そう思う理由として、ストーリーの最後に出会う盲目の女とのエピソードでは、障害者ゆえに異性との触れ合い、もっと言えば性の味わいなど感じることなく生きてきた女に対しての救済ともいえる役割を男は果たすのだし、警察に御用になるでもなく、唐突に不条理な殺され方をするラストもある種の役目が終わった、ただそれだけのことを象徴するかの様。

こんなに猥雑な話なのに、ある意味、透明感すら感じてしまうのは、巨大な団地が立ち並び、ジェット機がいそいそしく飛び立つという、都会近郊の乾いた町を鋭く切り取った絶妙なショットの数々と、伝説の阿部薫が奏でる尋常じゃないくらいに荒々しい、素晴らしい音楽の数々。

例によって、情欲を駆り立てられるような内容ではない為、ピンク映画として何かを期待するのは間違いである。


 『13人連続暴行魔』                             13renzoku
  監督:若松孝二
  脚本:出口出
  撮影:伊東英男
  音楽:阿部薫
  出演:馬津天三、日野繭子、杉佳代子、
      たかとりあみ、荒木クミ子、高木マヤ、
      山下エミ、下元史朗、阿部薫
  (1978、新東宝)

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日本映画の感想 『新日本暴行暗黒史 復讐鬼』

おどろおどろしい大そうなタイトルだが、ピンク映画の一貫として撮られた若松プロ作品。肺病のため村八分にされてきた男が、村人の妹へのレイプ、自身へのリンチを契機に復讐を開始する。

過激派左翼運動とは直接の関わりはないストーリーだが、村社会という閉鎖的権力社会に対しての挑戦、というテーマは否応なしに反体制運動を連想させる。ピンク映画なので、主人公が村人を襲う際、真っ昼間にも関わらず村人たちは必ず情事に耽っているという非常に不自然なエロ描写がブチ込まれているものの、ストーリー全体に漂うのは重苦しいムード。主人公の脳裏に何度も妹へのレイプ、自身へのリンチのシーンがオーバーラップする。妹の「お兄ちゃ~ん、助けて~」という悲痛な叫びと、時代を感じさせる暗いフォーク調の男声スキャットのテーマソングが延々と鳴り響き、トラウマ度は120%。

この頃のピンク映画は、大部分はモノクロ、重要なカラミの部分だけカラーフィルムというパートカラー作品がほとんど。若松作品ではしばしばこのパートカラーを逆手にとって、効果を挙げている。例えばATG作品『天使の恍惚』では、それまでのジリジリした展開とはうって変わり、テロ行動開始と同時にけたたましい山下洋輔バンドのフリージャズとともにカラーフィルムに切り替わる、といった具合に。本作でも妹の亡骸と一緒に風呂に入り、きれいに体を洗ってやる主人公。その後、妹を床に寝かせ、白ふんどし一丁になった兄が妹にせつせつと呼びかける、というなかなかに切ないこのシーンでパートカラーが使用されており、非常に美しいシーンに仕上がっている。

ちなみに、はっきりいって、若松孝二による左派プロパガンダ映画なので、ポルノグラフィー的興味を持って見るとエライ目に遭う。注意していただきたい。


 『新日本暴行暗黒史 復讐鬼』                   Hukusyuuki_2
  監督:若松孝二
  脚本:出口出
  撮影:伊東英男
  音楽:関田昇介
  出演:吉沢健、津島明子、関成夫、
      津崎公平、三枝陽子、田口一矢
  (1969、若松プロ)

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日本映画の感想 『雷魚(黒い下着の女 雷魚)』

妻夫木聡主演の大作『感染列島』が公開中の瀬々敬久監督による97年のピンク作品。昭和60年代に実際に起きた二つの事件、「札幌テレクラ殺人事件」と「日野OL放火殺人事件」をモチーフに、生死の狭間で漂う人間模様を過酷に骨太に描いている。

同時期に実際に起こった事件の関係人物や犯人を、物語の中で強引に結びつけるといった手法は以前からよく存在するような気がして、例えば、高橋伴明監督の『TATTOO[刺青]あり』でも、関根恵子演じるヒロインは男を破滅に追い込む女性として、宇崎竜童演じる後の三菱銀行強盗犯と別れた後は、伝説のヒットマン鳴海清とくっついているという設定であった。ただし、この作品では行きずりの男を殺してしまった佐倉萌と不倫の代償として子供を殺された伊藤猛の出会いは決して強引な導きでは無く、ある種の因果めいたものによって結び付けられたかのように、偶然を装いつつも必然に出会う。

佐倉萌演じる女は、ヘルニアや内臓疾患を抱え、自分の本当の意中の相手には捨てられ、本意とはいえない結婚相手にも2年そこそこで捨てられる始末。Raigyo_3 恨むべき男に話しあう機会も与えてもらえず、会ってももらえなければ殺すことも出来ない。そして、行きずりの男を殺してしまうのだが、そこに残るのは言いようのない虚無感だけ・・・死にたいほどに絶望しているのだけれど、人生の幕の引き方すらわからない程に心身もろとも病んでいる。 伊藤猛演じる男にしても、会社の後輩と不倫の末、二度の中絶。恨まれても仕方が無いといえば無いのかもしれないが、子供ごとマイホームを焼かれるという悲惨な体験は、これからの自分の行き場すら見いだせないほどの絶望感をもたらしている。「もう疲れたから殺してくれ」という佐倉萌の懇願に応える伊藤猛。第三者的な目で見ると因果という言葉で片付けられるのだろう。しかし、伊藤にとっても佐倉萌はただの行きずりに過ぎないのかもしれないし、お互いに行き場のわからない、行き場を突き止めても本懐を遂げられないもどかしさ、虚無感が生々しくリアリスティックに見る者の胸を打つ。

テレクラ・不倫・殺人。しかも実際に起こった事件。一歩間違えれば、ワイドショーとなんら変わらない通俗趣味的なものに成り下がりがちなテーマだが、そこまで落ちぶれさせない、どっしりとした人間ドラマとして本作は成功している。

制作費600万円、撮影日数7日間という、にわかには信じがたい過酷な条件で製作された本作だが、それでもあくまでピンクという枠組みの中で作られた作品であるから、通常のピンク映画の倍に近い赤字制作が敢行されている。


 『雷魚(黒い下着の女 雷魚)』                Raigyo2_3
  監督:瀬々敬久
  脚本:井土紀州、瀬々敬久
  撮影:斉藤幸一
  音楽:安川午朗
  出演:佐倉萌、伊藤猛、鈴木卓爾
      のぎすみこ、外波山文明、佐野和宏
  (1997、国映・新東宝)

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