広島市きっての暴力団・村岡組の実力者・杉原(鈴木康弘)が射殺された。
渡世からの引退を示唆していた村岡(名和宏)の跡目と目されていた杉原の死は広島ヤクザ界のパワーバランスを揺るがす事態に。まず、村岡舎弟の打本(加藤武)は、村岡組幹部の武田(小林旭)、松永(成田三樹夫)、江田(山城新伍)、そして今は山守組から独立している呉の広能(菅原文太)らと兄弟盃を交わすなどして地盤固め。そして、広能が神戸明石組幹部・岩井(梅宮辰夫)と懇意であることにつけ込み打本は、「明石組と同盟を組みたい」と広能に頼み込む。明石組舎弟の相原(遠藤辰雄)と兄弟盃を交わした打本であったが、村岡との直盃をひた隠しにして今度は明石組長(丹波哲郎)との直盃を交わそうと目論む。打本の行過ぎた盃外交に苦言を呈する広能であったが、これが打本の癪にさわり、以後、打本は事あるごとに広能を邪険に扱う。
一方、明石組との接近を強める打本を快く思わなかった村岡は、跡目を呉・山守組組長・山守(金子信雄)に譲ってしまう。ここに呉・山守組と広島・村岡組の合併が成り、山守は名実ともに広島ヤクザ界のドンとなった。村岡は、山守への跡目譲りを、村岡組後継者にふさわしい人物が
現れるまでの応急処置としか考えていなかったが、これで強欲・山守が大人しくしているはずもなければ、打本も黙ってはいなかった。山口・岩国での抗争をきっかけとした打本会VS山守組の代理戦争は、広能、松永らのおしらけムードが功を奏しいったんは回避されるものの、依然緊張状態は続く。いったんは渡世の親と仰いだ山守、一方で兄弟盃を交わしている打本、さらに そのバックには親交深い岩井属する日本最大の暴力組織明石組の存在もあり、いずれが己の進むべき道なのか?と苦悩する広能。曲がったことは嫌い、誰にもなびかず己の信念をひたすら模索する。対し、打算や欲得、保身を優先する周りの人間たち・・・イモ引き、裏切りのオンパレード。広能が気付いた頃には、山守からも打本からも孤立していた。
明石組の後ろ盾をかさに勢いを取り戻した打本に業を煮やす山守は、病床に伏せていた組内の実力者・武田を引っ張り出し、若頭へと据える。武田はまず、明石組の対抗組織・神和会と同盟を結んだ。これで、明石組傘下の打本と兄弟盃を交わしながらも、神和会と同盟を結び、更に打本組幹部の早川(室田日出男)は、山守に抱きかかえられているという非常にカオスな対立構造が出来上がった。広能は山守体制を切り崩すことで、広島ヤクザ社会の建て直しを図ろうと画策する。明石組から打本との盃について選択を迫られた際、武田は打本と袂を分かつ決意をしていたが、広島ヤクザ界を一枚岩にして、山守へのクーデターを起こそうとしていた広能は、選択の場に長老・大久保(内田朝雄)を呼びいれ、武田の返盃を阻止する。武田に意図を説明する広能であったが、後日、広能のもとに山守組から破門状が届く。広能は、打本との盃の件で神和会から厳しい追及を受けた山守組のスケープゴートにされたのである。一方の明石組は、打本に対し、密かに山守と内通している早川を破門させ、山守VS打本の対立構造を強めていく。そんな折、親分の苦境を憂う広能組の若衆・倉元(渡瀬恒彦)は、相変わらず山守に金魚のフンの如く付きまとう槙原(田中邦衛)殺害に走るが、槙原と内通した西条(川谷拓三)のチンコロにより、待ち伏せを喰らい銃弾に倒れる。元々は倉元を可愛がっていた西条であったが、自らの女(池玲子)を寝取られた腹いせからであった(寝取られたといっても、西条自身が兄貴分として弟分・倉元に自分の女を施したのが発端であったが)。時を同じくして、武田は打本から破門にされた早川を利用して、打本組事務所を襲撃。かくして広島代理戦争の幕は切って落とされた・・・
眉をそり落とした岩井(梅宮辰夫)、相変わらずの山守(金子信雄)、その山守並みにセコさ爆発の打本(加藤武)、ひたすらクールな松永(成田三樹夫)、武闘派で頭はあまりよろしくない江田(山城新伍)、ハードなアクションにより一層磨きをかけた倉元(渡瀬恒彦)、シリーズ終盤の重要人物武田(小林旭)、セリフはなくともさすがの貫禄な明石組長(丹波哲郎)等々、まったく異なるカラーのぶつかり合いが頂点に達したのが本作だ。
まったく、誰に視点を置いて鑑賞すればいいのかがわからない上、ストーリーそのものも複雑怪奇。混沌としたヤクザ同士の敵対関係が絡みあい、グループを作っては裏切って他方と手を組み、エネルギーの固まりが、あちらで膨れあがったと思うと、こちらで暴発し・・・さながらちょっとミニスケールの三国志の様。
ラスト、まるで虫けらのように散っていった渡瀬の遺骨を握り締め、無念さを滲ませる文太。盃外交、イモ引き、裏切り・・・火種は方々にばら撒かれた。暴発必至。この後、渡瀬のような屍が無数に積み上げられることとなる。
『仁義なき戦い 代理戦争』
監督:深作欣二
脚本:笠原和夫
撮影:吉田貞次
音楽:津島利章
出演:菅原文太、小林旭、成田三樹夫、
山城新伍、加藤武、室田日出男、
金子信雄、遠藤辰雄、山本麟一、
丹波哲郎、池玲子、渡瀬恒彦、
川谷拓三、田中邦衛、梅宮辰夫
(1973、東映京都)
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