日本映画の感想 『天使のはらわた 赤い眩暈』
石井隆が原作・脚本を担当し、日活ロマンポルノの屋台骨を支えた看板シリーズ『天使のはらわた』のラスト作(1994年に『天使のはらわた 赤い閃光』が製作されているが、厳密に言うとロマンポルノとしてはこれがラストとなる)であり、石井隆の初監督作品です。
石井隆の描くドラマは、女性が奈落に落とされるシチュエーション(ほとんどレイプされる)が多いのですが、それに関して絶対に言える事は、彼は必ず、犯す側を動かし難い加害者として描き(面白おかしく描くことなく)、犯される女性の内面を常に描き続けたということ。かといって、ヒロインを見る側から同情されるような悲劇的なものにするわけでもなく、常に女性は再生し、自立し、立ち向かう姿勢で男達に復讐する、そんな女の存在から感動を引出します。その象徴が、石井隆の話にはかなりの率で登場する名美と村木の存在。しかし、この映画では名美はそんなに深い淵までは落されません。待ち合わせの場所にやって来れない竹中演じる村木(些細なことでヤクザ・柄本明に殺される)を待つ名美は、「来ませんネ」「まっ、いいか」などと、結構あっけらかんな感じ。
石井監督はもう名美と村木の物語に終止符を打ちたかったのでしょうか。現代の世の中では、女性が充分自立できる時代ですし、男にも勝るほどの能力を持つ女性も数多くいます。この時、石井監督は既に、女性が男という強権に支配されることのない時代の足音を感じ取っていたのかもしれません。そう考えれば、もう名美と村木の物語を綴る必要性も薄れますし、ロマンポルノそのものも終焉へと向かっていた時期です。この後の石井映画にも、名美と村木は絶えず登場しますが、そこで描かれている名美は「天使のはらわた」シリーズよりむしろ強い存在に見えるし、村木を大らかな母性で包んでいるようにも思えるのです。
『天使のはらわた 赤い眩暈』
監督:石井隆
脚本:石井隆
原作:石井隆
撮影:佐々木原保志
音楽:THE FLY
出演:竹中直人、桂木麻也子、泉じゅん、
柄本明、小林宏史、山中ゆうほ
(1988、ニューセンチュリープロデューサーズ、にっかつ)
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