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2010年8月

2010年8月30日 (月)

必殺仕置屋稼業 第1話 『一筆啓上地獄が見えた』

当時、他局では「長崎犯科帳」や「影同心」といった裏稼業を持つ同心を主人公とした、いわば中村主水にインスパイアされたであろうパクリ作品が乱立したという(私自身は未見だが)。チーフPの山内久司氏が、これら類似作品の完成度の低さに苛立ち、そのエネルギーでもって満を持して制作したのがこの仕置屋稼業というのは有名な話。もちろん、必殺シリーズ中でも出色の完成度を誇っていることは言うまでもない。だいたい、1回目からして「地獄が見えた」である。単なるエンタテイメントの枠を超えた、壮絶なテーマ性が内包されている。裏の稼業人たちが背負い込む宿命。命の、金の、重みがイヤというほどに沁みてくる。「生きるも地獄、死ぬも地獄」(by印玄)の世界。壮絶な仕置屋稼業→仕業人あたりの流れを見ていると、いかに後期必殺シリーズがぬるいかがよくわかる。

当時、衝撃をもって迎えられたであろう現代調のOP。おどろおどろしいアバンタイトル。脚本、演出、カメラワーク、平尾先生のBGM。全てにおいて、必殺スタッフの鋭利なセンスがほとばしる傑作。

せっかく南町奉行所に栄転した矢先、否応なく裏稼業という地獄に再び足を突っ込むことになる主水はその暗殺剣によりいっそう磨きがかかる。
後の三味線屋勇次(中条きよし)や組紐屋の竜(京本雅樹) のキャラ造型の素ともなった市松。何かと仕置の最中を目撃されることが多いので、主水と比べればプロ意識に欠けるような気もしないでもないが、まぁ格好良さは誰もが認めるところか。それも沖雅也という恰好の演者が居たからこそ。キャスティングの勝利だな。沖雅也こそ必殺シリーズ最大の功労者だと勝手に思う今日このごろ。
実母を殺害したというトラウマを負って躁鬱の気があるという、何気に難役じゃねぇの?と思われる印玄。話が進むにつれ、お笑い担当になった感のあるキャラだが、この第1回ではまだ粗暴で不気味でスケベなだけの印玄である。薪を素手で真っ二つに割るんだぜ。新克利さんも最近メディアに姿を見せないなぁ。
必殺シリーズ中でも、最高のアシスト役だと思っている捨三は今作から登場。主水とはなにやら古くからの間柄っぽいが、二人の過去は明らかにされず。久々の再開シーン。主水「おめぇ、最近何やってるんだ?」、捨三「相変わらずですわ。湯沸かして、火おこして、掃除して寝る。まるでモグラですわぁ」。この渡辺篤史が漂わせるやつれた感、というか哀愁は何なんだ!?当時、渡辺氏は27~8歳くらい。今、27~8歳くらいでこの深みのある演技が出来る俳優なんていない。
今の若い子がこの中村玉緒を見たらびっくりするんだろうなぁ。まぁ、可愛いのなんのって。声はもうそろそろダミ声になりつつあるが。愛敬のある女を演じさせたら、この人の右に出る人は居ない。


ゲスト:高木均、工藤明子、谷村昌彦、浜田晃            Shiokiya

脚本:安倍徹郎

監督:蔵原惟繕

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必殺仕置屋稼業(1975~1976)

一筆啓上 火の用心
こんち日柄も 良いようで
あなたのお命 もらいます
ひとのお命 頂くからは
いずれ私も 地獄道
右手に刃を 握っていても
にわか仕込みの 南無阿弥陀仏
まずは これまで

あらあらかしこ


市松:沖雅也
印玄:新克利
捨三:渡辺篤史
おこう:中村玉緒
亀吉:小松政夫
おはつ:石原初音
与力村野:宗方勝巳
中村りつ:白木万理
中村せん:菅井きん
中村主水:藤田まこと

OPナレーション:草笛光子

主題歌:「哀愁」(歌:葵三音子)

制作:山内久司、櫻井洋三、仲川利久
音楽:平尾昌晃


Shiokiya3

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2010年8月28日 (土)

必殺仕掛人 第12話 『秋風二人旅』

京の白子屋の元締めの依頼を受け出張することになった梅安と左内。
一足先に江戸を出た梅安は白子屋の案内人・彦造とともに京を目指していた。その道中で一人の侍と出会った梅安と彦造。彦造は血相を変えてその侍に斬りかかろうとするが、寸でのところで梅安が止めに入る。彦造によれば、20年前、自分の妻を手篭めにした侍にそっくりだと言う。しばらくその侍を観察する梅安であったが、その凛とした言動からは、とても彦造の言うような無法者には見えなかった。京へ着くとその侍は、由緒正しい大和郡山松平家の家臣・峯山又十郎だということがわかった。さらに又十郎は、梅安の鍼の師匠の墓参りに現れた。師匠とは旧知の間柄であったと言う。思い切って、彦造の一件を打ち明ける梅安だったが、又十郎は身に覚えがないと言う。自分の身の潔白を証明する為なら彦造と面会しても良いと言い切る又十郎。

京へ入るとさっそく白子屋の元締めから仕掛けの依頼を受ける。標的は昨今、京の町を好き放題に荒らしまくる6人の浪人集団。道中、寄り道が過ぎた梅安より一足先に江戸へ入った左内と合流した梅安は、彦造と共に白子屋と依頼人の密談を盗み聴き。殺しの依頼人として現れたのは又十郎であった。どうやら、浪人集団の首領格は又十郎の実弟らしい。翌日、浪人集団が現れたと聞き、さっそく偵察に出向く3人。そこには又十郎瓜二つの惣市が往来を闊歩していた。彦造は自分の仇が、惣市であると確信した・・・

天知茂が所作や声色を巧みに変化させながら、行儀の良い高級侍と荒くれ無法者浪人という真逆な二役を熱演する。そういえば、江戸川乱歩の美女シリーズでも天知茂の二役、という回があったような気がするが。この弟・惣市が荒くれ者で剣の腕も滅法強いという厄介な敵で、左内とのタイマン真剣勝負でも結構善戦するのである。まぁ、スター・天知さんがゲストとあっては、手強く設定をされても仕方のないところか。

ラスト、帰路で又十郎と出会った梅安と左内。「京ではずっと白子屋の旦那の所に居た」と告げる梅安。狼狽する又十郎。「最後の一言は余計ではなかったか」と咎める左内に「一番のワルはあのお侍(又十郎)だった気がする」としみじみ呟く梅安。


ゲスト:天知茂、小林昭二、原健策                    Shikakenin2

脚本:安倍徹郎

監督:三隅研次

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2010年8月27日 (金)

必殺仕置人 第17話 『恋情すてて死の願い』

陰謀に巻き込まれ無実の罪を背負わされた油問屋。市中引き回しの上、火あぶりという極刑に処せられた油問屋の娘2人は、5年後、父を死に追いやった陰謀を暴くべく、真実を記したとされる念書を奪う為、夜な夜な油問屋ばかりを付け狙う盗賊となったのだが・・・

鉄、錠、主水が仕置の密談をしてた頃、そこに偶然逃げ込んだ女は盗賊姉妹の姉・お美弥であった。仕置人だということがバレたとあっては、生かしちゃおけねぇと息巻く主水らであったが、翌日、優しい錠はあっさりお美弥を家に送り返してやった。その後も怪我のお美弥をみかねて、恋仲だった作次郎への想いを断ち切り一人命がけで敵のアジトに乗り込んだ妹・お鈴を影ながらサポートしたり、念書を奪ったり、火付けの証文を手に入れたりと錠の優しさが大活躍する回である。

それにしても、この陰謀の黒幕・与力永尾を絶妙のコンビプレイで仕置する鉄と主水の格好良さときたら。こういう殺し方も珍しいわな。


ゲスト:中田喜子、長谷川澄子、岩下浩、高峰圭二         Shiokinin2

脚本:桜井康裕

監督:長谷和夫

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2010年8月26日 (木)

必殺仕置人 第16話 『大悪党のニセ涙』

祭りの晩、三国屋の主人が何者かに殺され150両が奪われた。奉行所は事件当夜、近くの寺に居た仙八をマーク。仙八は賭け事に目が無い遊び人で盗みの前科もあった男だったのだ。奉行所から逃げるような行動を取ったことで、仙八はすぐお縄になり、拷問を受ける。「断じて、殺しはやってねぇ。病気のおっかあを見なきゃならねぇんだ」と懇願する仙八に同情した天神の小六親分や主水は仙八のために一肌脱ぐ。強風が吹く晩、牢の近くで火事が発生。主水の機転で火の手を牢の近くに引き寄せ、囚人たちの解放に成功。無事、牢を抜け出すことが出来た仙八であったが、仙八が向かった先は病床に伏せる母親の枕もとではなかった・・・

もう、タイトルでバレバレなんだが、実は仙八(森次晃嗣)が大悪党である。私は世代的にウルトラマンセブンを知らないので、森次晃嗣=悪役俳優というイメージしかないが、もう少し上の世代になると「あのモロボシダンが・・・」と相当なショックを抱くらしい。どうでもいいことだが、若い頃の森次は若い頃の片桐竜次に似ている。本当にどうでもよいが。

今回の仕置の依頼は、面子を潰された牢名主の小六親分から。鉄ひとりでそっと仙八を片付ける。錠は出番少なし、仕置きも無し(ギャラはしっかりもらう)。今回の主水はどちらかといえば仙八に騙されたクチ。


ゲスト:森次晃嗣、西田良、香月京子                  Shiokinin2

脚本:國弘威雄

監督:工藤栄一

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2010年8月19日 (木)

必殺仕置人 第15話 『夜がキバむく一つ宿』

殿山泰司、梅津栄、堺左千夫・・・夜がキバむく一つ宿?「胡散臭さ炸裂の一つ宿」でも良いな。

出張仕置きの帰り道で大雨に祟られる鉄と錠。一山超えなければ江戸へは帰れない二人は、女旅芸人っぽい伊佐山ひろ子から雨宿りの出来る小屋の存在を知り、ここで一夜を過ごすこととなった。小屋には既に先客が大勢居る。鉄や錠の後からも客が大勢くる。今夜は仕方なくここで雑魚寝・・・と思いきや、宿内のものが次々と殺される。黒幕は雨宿り人の一人、坊主の殿山と小屋の外で待ち構える伊佐山ひろ子であった。彼らは公儀隠密の口封じの命を負った者達。山道を封鎖し、疑わしき旅人達を謀って小屋に押し込めたまでは良かったが、誰が隠密かははっきりとわからない。とりあえず、表に出た者から一人一人消していくのだった。

本当の隠密は、薬の行商に姿を変えた堺左千夫だったが、堺がそれとわかるまで何人もの命が失われる。鉄や錠も仕置き直後だけにナーバスにならざるを得ない展開。密室サスペンス風から大殺戮劇へと、今の時代のテレビじゃ企画そのものが通らないかもしれない過激な一編。相変わらず、ダウナーかつエキセントリックな伊佐山ひろ子の女殺し屋が良い感じ。それにしても、鉄と錠は強い。いや、そうでなければ物語が成り立たないから困るんだけれども。江戸に置いてけぼりの主水はほとんど出番なし。予定通りに帰ってこない鉄や錠を一応心配しているような、そうでないような。


ゲスト:殿山泰司、伊佐山ひろ子、境左千夫、             Shiokinin2
     梅津栄、左時枝  

脚本:浅間虹児

監督:蔵原惟繕

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必殺仕置人(1973)

のさばる悪をなんとする
天の裁きは待ってはおれぬ
この世の正義もあてにはならぬ
闇に裁いて仕置きする

南無阿弥陀仏


念仏の鉄:山崎努
棺桶の錠:沖雅也
鉄砲玉のおきん:野川由美子
おひろめの半次:津坂匡章(現:秋野太作)
中村せん:菅井きん
中村りつ:白木万理
お島:三島ゆり子
天神の小六:高松英郎
中村主水:藤田まこと

OPナレーション:芥川隆行

主題歌:「やがて愛の日が」(三井由美子)

制作:山内久司、櫻井洋三、仲川利久
音楽:平尾昌晃


Shiokinin_3

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2010年8月18日 (水)

必殺仕掛人 第11話 『大奥女中殺し』

いきなりあの怪しげな「ビョーン、ビョーン」というBGMをバックに大奥内でのリンチシーンというハードな冒頭。
今回の依頼はこのリンチ事件の首謀者、大奥筆頭年寄・浦尾を仕掛けること。男子禁制の大奥、しかも三千人の奥女中を取り仕切る超大物・浦尾を仕掛ける(ちなみに顔すらわからない)という無理難題を与えられた仕掛人たち。例のごとく、左内は慎重な姿勢を崩さないが、梅安は法外な報酬に一人色めき立つ。

結局、梅安たちは見事浦尾殺しに成功するのであるが、まぁ、話の展開に無理がないところが良い。大奥内でのリンチ騒ぎの裏側には果たして何があったのか?という真相究明などはどうでも良いことで、相手がおおかた善人であろうが悪人であろうがそんなことはお構いなし。与えられた仕事を確実に遂行するだけという、ハードボイルドさが冴え渡る一編。

終始煮え切らない左内、金欲しさに暴走気味な梅安、紆余曲折を経ながらも、音羽屋の老練な仕切りで結局最後の最後には見事やり遂げてしまう。まさに「仕掛けて、仕損じなし」の真骨頂のようなエピソード。



ゲスト:磯村みどり、園井裕久                       Shikakenin2                        

脚本:國弘威雄

監督:松野宏軌

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2010年8月16日 (月)

必殺仕掛人 第10話 『命売りますもらいます』

近頃江戸で流行の「いのち講」をめぐるお話。いわゆる生命保険である。
元来、細々と薬屋を営んでいた後藤屋は「いのち講」で巨万の富を築き上げた。「いのち講」をかけた妻を殺した夫が市中引き回しの刑を受ける場面が冒頭のシーン。
保険金殺人である。保険金目当ての殺しが横行しては後藤屋としてもたまらないので、やくざ者や奉行所と連携して、いのち講の加入者が「真っ当な死に方をしたか?」という調べを徹底していた。こうして、なんやかんやと死に方に難癖をつけ、保険金の払いを渋るというのが後藤屋の手口。さらに後藤屋は、いのち講でかき集めた資金を元に高利貸しまで始め、ますます肥大していくばかり。

「我々にいのち講絡みの仕掛依頼が舞い込まないだろうか?」と心配する真面目な左内。
そんな左内を「ガハハ」と笑って一蹴する、相変わらず呑気な梅安。

伊助という男が「ならず者の兄・巳之吉を殺してくれ」と仕掛の依頼をしてくる。巳之吉は暴れだしたら手のつけられないやくざ者で、伊助に金の無心を繰り返していた。伊助の手引により、巳之吉を探し当てた梅安と左内は見事仕掛けに成功するが、仕掛けた相手はなんと伊助自身であった。巳之吉は既に病死していて、巳之吉に成りすました伊助がわざと仕掛けられたのであった。伊助は病弱の妻の医療費を工面する為、自らにいのち講を掛けていた…

裏稼業に身を置くからこそ余計に感じてしまう、世の中に蔓延する矛盾や虚しさに悶々とする左内。
それでも仕掛人として生きて続けていくしか我々には道がない、とドライに言い放つ梅安。という対照的な構図で締め。


ゲスト:園井啓介、唐沢民賢                       Shikakenin2

脚本:國弘威雄

監督:松野宏軌

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必殺仕掛人(1972~1973)

はらせぬ恨みをはらし 許せぬ人でなしを消す 
いずれも人知れず 仕掛けて仕損じなし 人呼んで仕掛人
ただしこの稼業 江戸職業づくしには載っていない
     

西村左内:林与一
藤枝梅安:緒形拳
峰の千蔵:津坂匡章(現:秋野太作)
櫓の万吉:太田博之
おきん:野川由美子
おくら:中村玉緒
西村美代:松本留美
西村彦次郎:岡本健
音羽屋半右衛門:山村聰

OPナレーション:睦五郎

主題歌:「荒野の果てに」(山下雄三)

制作:山内久司、櫻井洋三、仲川利久
音楽:平尾昌晃




Shikakenin_2

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2010年8月12日 (木)

日本映画の感想 『必殺!Ⅲ 裏か表か』

好評を博したテレビドラマを映画化しようという動きはいつの時代に生まれたのか?はっきりとはわからないが、ひょっとしてこの必殺シリーズが元祖かもしれない。基本スタンスは保ちつつ、映画でしか為し得ない何かを出していく。ドラマの劇場版はいまやブームの一つだが、成功例は数えるほど。これはなかなかに難しい挑戦だ。本作も、映画版ゆえの一味違うアレンジとオリジナリティの狭間で揺れている。

まず、中村主水がハードである。あの昼行灯の呑気さの欠片もない。謀略にはまった主水が、得体のしれない巨悪に立ち向かっていくという展開なので、必然的に最後は大チャンバラとなる。テレビ版のような、しめやかな暗殺ではなく、この映画の主水はとにかく斬って斬って斬りまくる。ついでに成田三樹夫へは自白強要まがいの強引な取り調べを行う。これをオカマの同心・田中さんが止めに入るんである。工藤栄一監督の意図的な演出ということだが、これを面白いと感じる人も居れば、違和感で悶々とする人もまた居るのだろう。この辺のバランスの取り方が難しいわけである。

陰影に富んだ美しいカメラワークとアクションには定評のある工藤栄一監督である。その手の見所は満載であるが、それにしても、脚本は杜撰。主水たちの敵となる両替商組合と直接的な因縁があるのは、近所の懇意にしていた家族が一家心中した鍛冶屋の政くらいのもので、とにかく、主水のピンチには何の前触れもなく、うじゃうじゃと仕事人が現れる。組紐屋などは、まともなセリフすらなく当たり前のように屋根の上でスタンバイしているし、主水が同じ奉行所仲間から裏切りに遭うシーンでは、主水の上司は「お前の汚名を挽回・・・」などとほざいておるし。両替商組合の大物の娘、松坂慶子が何故に一介の貧乏同心・川谷拓ボンへ嫁いでいるのか?という説得力も不足気味。金、金、金の世界が嫌になった?その割にはあっさり元の鞘に納まっているわけで、しっくりこない。


 『必殺!Ⅲ 裏か表か』                        Hissatsu3
  監督:工藤栄一
  脚本:野上龍雄、保利吉紀、中村勝行
  撮影:石原興
  音楽:平尾昌晃
  出演:藤田まこと、松坂慶子、村上弘明、
      京本政樹、三田村邦彦、柴俊夫、
      笑福亭鶴瓶、川谷拓三、織本順吉、
      鮎川いづみ、伊武雅刀、山内としお、
      成田三樹夫、岸部一徳、白木万里、
      菅井きん、山田スミ子、野坂クミ
  (1986、松竹・朝日放送・京都映画)

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2010年8月11日 (水)

日本映画の感想 『嫌われ松子の一生』

この映画、130分か。いやぁ、しんどいなぁ。仕事で疲れきった身体には堪えるわい。
まったく救いようのない物語を思いっきりポップに、ファンタジックに見せているが、例えれば、いろんな曲のPVやアクション映画の予告編を休むことなく2時間強見せられているような感覚。とにかく息つく間がない。それなりに面白いことは面白いんだけど。

昭和22年生まれの松子の人生は、とにかく男に依存し、翻弄され、振り回されてあっけなく終わる。伊勢谷友介とのエピソードなど見ると、70年代の東映やくざ路線で男の都合の良いように扱われていた『人斬り与太 狂犬三兄弟』や『仁義なき戦い 頂上作戦』の渚まゆみを思い出す。石井隆作品における名美でもいい。松子は昭和の耐える女そのものだ。

何故、松子がそこまで堕ちていかなければならなかったのか?それは松子自身が、淋しがりやで愛に一途でピュアだから、ということなのだが、晩年を除いて、常に男を絶やすことがなかった松子なのだから、松子という女性自身も魅力的であるという説得力は必要だ。要は、松子は精神的にも肉体的にも男好きのするキャラでなくてはならない。そういう意味では、松子演じる中谷美紀は完璧。たとえバストトップは見せなくとも肉感的な女性であることは充分過ぎるほど表現出来ている。性格はこうだと決めたら一気呵成の激情型。男は最初から肉体で繋がりたがるので、そういう意味で松子はたいそう都合が良い。でもこの性格は、少々行き過ぎた行動にも走らせる為、その内、男に重くのしかかってくる。やがて男は皆、松子から離れていくのである。

この映画をみた女性の感想を是非聞いてみたいものである。男にとっては、必要以上の感情移入もなく「或る一人の女性の悲喜劇」としてドライに物語を捉えることが出来るだろう。女はどうだ?こういう生き方もアリと思うかな?あるいは、ここまで愛に真っ正直に居られることは羨ましいと思う?それとも、自立した女性の観点でみると、松子に対して嫌悪感を抱く女性もいるかもしれない。学生時代に心理学科の学生が、映画の暴力的なワンシーンを無作為に選んだ人たちに見せて、どう感じたかという統計をとっていた。この映画もジェンダー論かなんかの題材に使えそうな気がするが。


 『嫌われ松子の一生』                          Matsuko
  監督:中島哲也
  脚本:中島哲也
  撮影:阿藤正一
  音楽:ガブリエル・ロベルト
      渋谷毅
  出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、柄本明
      市川実日子、香川照之、谷原章介、ゴリ
      黒沢あすか、劇団ひとり、谷中敦、濱田マリ、
      BONNIE PINK、武田真治、荒川良々、
      柴咲コウ、カンニング竹山、宮藤官九郎
  (2006、『嫌われ松子の一生』製作委員会)

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