必殺仕置屋稼業 第1話 『一筆啓上地獄が見えた』
当時、他局では「長崎犯科帳」や「影同心」といった裏稼業を持つ同心を主人公とした、いわば中村主水にインスパイアされたであろうパクリ作品が乱立したという(私自身は未見だが)。チーフPの山内久司氏が、これら類似作品の完成度の低さに苛立ち、そのエネルギーでもって満を持して制作したのがこの仕置屋稼業というのは有名な話。もちろん、必殺シリーズ中でも出色の完成度を誇っていることは言うまでもない。だいたい、1回目からして「地獄が見えた」である。単なるエンタテイメントの枠を超えた、壮絶なテーマ性が内包されている。裏の稼業人たちが背負い込む宿命。命の、金の、重みがイヤというほどに沁みてくる。「生きるも地獄、死ぬも地獄」(by印玄)の世界。壮絶な仕置屋稼業→仕業人あたりの流れを見ていると、いかに後期必殺シリーズがぬるいかがよくわかる。
当時、衝撃をもって迎えられたであろう現代調のOP。おどろおどろしいアバンタイトル。脚本、演出、カメラワーク、平尾先生のBGM。全てにおいて、必殺スタッフの鋭利なセンスがほとばしる傑作。
せっかく南町奉行所に栄転した矢先、否応なく裏稼業という地獄に再び足を突っ込むことになる主水はその暗殺剣によりいっそう磨きがかかる。
後の三味線屋勇次(中条きよし)や組紐屋の竜(京本雅樹) のキャラ造型の素ともなった市松。何かと仕置の最中を目撃されることが多いので、主水と比べればプロ意識に欠けるような気もしないでもないが、まぁ格好良さは誰もが認めるところか。それも沖雅也という恰好の演者が居たからこそ。キャスティングの勝利だな。沖雅也こそ必殺シリーズ最大の功労者だと勝手に思う今日このごろ。
実母を殺害したというトラウマを負って躁鬱の気があるという、何気に難役じゃねぇの?と思われる印玄。話が進むにつれ、お笑い担当になった感のあるキャラだが、この第1回ではまだ粗暴で不気味でスケベなだけの印玄である。薪を素手で真っ二つに割るんだぜ。新克利さんも最近メディアに姿を見せないなぁ。
必殺シリーズ中でも、最高のアシスト役だと思っている捨三は今作から登場。主水とはなにやら古くからの間柄っぽいが、二人の過去は明らかにされず。久々の再開シーン。主水「おめぇ、最近何やってるんだ?」、捨三「相変わらずですわ。湯沸かして、火おこして、掃除して寝る。まるでモグラですわぁ」。この渡辺篤史が漂わせるやつれた感、というか哀愁は何なんだ!?当時、渡辺氏は27~8歳くらい。今、27~8歳くらいでこの深みのある演技が出来る俳優なんていない。
今の若い子がこの中村玉緒を見たらびっくりするんだろうなぁ。まぁ、可愛いのなんのって。声はもうそろそろダミ声になりつつあるが。愛敬のある女を演じさせたら、この人の右に出る人は居ない。
ゲスト:高木均、工藤明子、谷村昌彦、浜田晃
脚本:安倍徹郎
監督:蔵原惟繕
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