韓国映画の感想 『甘い人生』
ソウルのスカイラウンジのマネージャー、ソヌは非情と怜悧さを身上に7年間にわたり裏社会のボス、カンに仕え今の地位を手にした。冷酷なほどに頭の切れる男ソヌは、表にも裏にも通るその手腕により、裏社会にも絶大な力を持つボスの信頼と寵愛を一身に受けていた。ソヌはある日、カンに呼ばれて指示を受ける。彼が1週間上海に所用で行っている間、愛人のヒスを見張ってくれと言うのだが・・・
韓流スター、イ・ビョンホン自ら「代表作」といってはばからないこの作品。
“究極のラブ・ストーリー”というキャッチを信じ込んで、いざ劇場へと足を運んだ多数のビョン様フリークのオバちゃんたちが、おそらくは何人か卒倒したことであろうこの作品。いつもクールでストイックな主人公・ソヌの一瞬の気の迷いから生じる非情な運命が、凄惨なバイオレンスとともに描かれる。バイオレンス映画が三度の飯より大好きな自分としては、なんてこたぁない描写だったが、左手を重厚そうな鉄製のドリルかなにかで思い切り潰されたり、生き埋めにされたり・・・というリンチのシーンは、ちょっと慣れていない人には過激かもしれない。しかしこのシーンしかり、冒頭と中盤で魅せるイ・ビョンホンの立ち回りやラストの銃撃戦には大した工夫こそないものの、思わず唸らずにはいられない、スタイリッシュさとテンポの良さがあって、相当に質が高いと思う。
またこれは単なるヤクザ同士の抗争劇といった類いのものではなく、主人公ソヌが非情な運命に狂わされ、周りもそれに呼応するかのようにその荒波に飲まれて込んでいく原因が、実は一人の若い娘のせいであるということ。しかも男たちが、最後にはこんなにも意地とプライドを賭けて激しいドンパチやってるのに、当の娘は何食わぬ顔で普段と変わらぬ生活を送っている・・・という皮肉は、ラスト近くソヌの洗面所でのセリフ「どうしてこうなった?」というこの一言に集約されていると思う。一見、完璧そうでシビアにも見える裏社会の男たちでも、こんな些細な事で歯車が狂っていく展開は、実社会にもありそうな不条理めいたもののようで、その発想の着眼点は凄く興味深かった。
最後に、この映画を評価する上で最も避けて通れない所、「この映画は本当にラブ・ストーリーなのか!?」ということなのだが、これはラストにソヌがヒスの事を回顧し、涙する理由を昔話かなんかと引っ掛けて“決して叶わぬ甘い夢だったからです”なんて締め括っているあたり、やはりソヌはヒスに一目惚れしてしまっていた、と考えるのが自然だろう。しかしそれなら、ソヌがヒスに惹かれていく過程の描き方が不充分ではなかろうか?その為、彼女のための選択を決断したソヌの心情にイマイチ感情移入し難かった。もう少し時間を割いてエピソードを入れたほうが、より一層ソヌの行動に説得力を持たせる事が出来たかもしれない。まぁ、とにかく「イ・ビョンホン?ヨン様みたいな奴だろ?」とこの映画を完全にスルーしている男どもが結構多いのではないかと思われるので、僕は積極的に薦めるつもりだ。たった一度、「心が揺れた」為に運命の歯車が狂っていく様子が淡々と描かれ、それでも抗いながら戦うイ・ビョンホンの姿に「男の美学」を見る事ができる。これはまさしく男の映画といえる。
『甘い人生』
監督:キム・ジウン
脚本:キム・ジウン
撮影:キム・ジイ
音楽:ピーチ・プレゼンツ
出演:イ・ビョンホン、シン・ミナ、チン・グ、
ファン・ジョンミン、キム・ヨンチョル
(2005、韓国)
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