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日本映画の感想 『(秘)女郎責め地獄』

日活ロマンポルノは言うまでもなくセックスを売り物にした作品群ですが、2週間に2本の新作を封切らなければならなかったわけで、単純にセックスシーンを垂れ流しておけばそれでよかったわけではありません。一方向的な作品づくりではすぐにマンネリ化してしまいます。というわけで、本作のような時代劇、アクション、サスペンス、恋愛劇、コメディー・・・様々なアプローチが為されたわけですが、多種多様のドラマを作っていく中でもう一つ大事な要素は女性を尊重することだったと思います。男にとってのセックスはとどのつまり欲望のはけ口に終始します(ほんまかいな)。女性にとってのセックスは「身体は抱かれても心までは抱かれない」という言葉に代表されるように、精神面によるところも大きい(たぶん)。セックスの中にドラマツルギーを求めるのであれば、やはり女性の目線に立って女性を尊重した作品づくりに徹することが最重要だったのでしょう。

というわけで、女性の根源的な強さを全面に押し出した田中監督渾身の傑作であります。元は吉原の遊女でしたが、彼女を買った客はことごとく死んでしまうという不幸に見舞われ客が取れなくなり、今や最下層の女郎長屋に身を落としている“死神おせん”こと中川梨絵。ヒモ・高橋明の罠にかかって、乞食に凌辱されても、あくまで前向き。バイタリティの塊。己の境遇を悔いることなく(本当はイヤなんだろうけど)、気風の良い江戸っ子言葉で周囲をまくし立てるその姿は単純に格好良いと思う。

目暗の浄瑠璃師・山科ゆりも物凄い。目が見えないゆえ、見知らぬ男に犯されてしまいますが、山科は一生を添い遂げるつもりだった同じ浄瑠璃師の男への義理立てなのか、女としての意地なのか、見知らぬ男に犯されたことは御法度の心中であったと虚偽の申告をして、自ら晒し者へと身を落とします。この後、非人扱いを受けようがどうでもよい。私の人生は犯された時点で決まったと。犯した男を地獄へと突き落とすのみ。隣でイヤだイヤだと泣きじゃくる男を尻目に山科ゆりは何とも潔い。そんな山科を見て、中川梨絵は「キレイな目をしている」と聴衆の中、一人彼女を絶賛します。強い女同士のシンパシーでしょうか。

とにかくこの映画、この後も怒涛の展開が待ち受けていますが、結局、中川梨絵が男に媚びることは最後までありません。高橋明は死ぬ間際、中川を抱きながら「ざまあみやがれ、極楽往生だ」と言いますが、それは中川によって大らかな母性めいたもので包まれたからこそ口をついた言葉(だと思う)。
なんやかんや言いながら、中川も高橋のことを好きだったみたいですが、中川の方は切り替えが早いです。元は山科と夫婦の契りを交わしていた男からも誘いを受けますが、「うぶだねぇ、あんたとの縁はここまで」と、ここもあっさり受け流し。「男の方がよっぽど女々しい生き物でござんす」と言わんばかりに爽快な笑顔でジ・エンド。

日活ロマンポルノはだいたい、男が女に完敗し、最終的には女が尊重されます。だからこそ女がおそろしく魅力的で格好良い。そして面白い。本作はそんな典型例の映画です。
石畳に描かれたオープニングクレジット、全編を包む妖しい人形浄瑠璃、激しいカッティング奏法が冴え渡る三味線・・・田中監督の芸術性もいかんなく発揮されています(音楽はまたしても月見里太一=鏑木創先生)。


 『(秘)女郎責め地獄』                              Jorou
  監督:田中登
  脚本:田中陽造
  撮影:高村倉太郎
  音楽:月見里太一(=鏑木創)
  出演:中川梨絵、山科ゆり、高橋明、
      絵沢萌子、堂下繁、織田俊彦
  (1973、日活)

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