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日本映画の感想 『神戸国際ギャング』

昭和22年神戸。戦後の混乱に乗じて、様々な新興暴力団が横暴を極めていた。健さんと菅原文太を中心とする日本人ギャング団もその一つ。ある日、彼らは米軍の物資を奪い中国マフィア・九龍に横流しします。ところが取引の金額をめぐり九龍と日本人ギャングは一触即発状態に。その後もことあるたびに両者は対立しますが、お互い手を握った方がうまくいく、ということで両者はあっさり手を組みます。そんな中、今度は九龍と朝鮮人グループ・三国人連盟が対立します。九龍&日本ギャング団VS三国人連盟は白昼のドヤ街でド派手に銃撃戦を繰り広げたりで、抗争は悪化するばかり。そんな状況に業を煮やしたのか、健さんは三国人連盟のボス・丹波哲郎と話をつけるべく、屋敷に乗り込みます。日本人ギャング団の一人、ポチこと石橋蓮司は丹波から自分が本当は朝鮮人だということを知られ逆上して思わず発砲。結局、丹波は全員からメッタ撃ちに遭い、あっけなく殺されました。自分とはほぼ同格なのに、健さんだけがボス、ボスと持て囃されるのが面白くない文太は、丹波殺しの罪を健さん一人にかぶせるべく刑事・戸浦六宏と裏交渉。健さんは逮捕されるが、九龍のボス・大滝秀治に保釈金を積んでもらいあっさり出所。ここでも狂犬コト文太は久々に戻ってきた田中邦衛が健さんには挨拶して自分には挨拶無しだったことにブチ切れてリンチを加えます。それを見た健さんも遂にブチ切れ、文太とタイマン勝負を申し入れますが、邦衛のエンコ摘めならぬ石を用いてのエンコ潰し(オエッ)によってなんとかその場はおさまります。その後、控訴され結局は懲役18年の刑をくらった健さんは、キチガイのフリをして入った病棟で蓮司と接触。蓮司から密告者は文太だと告げられすぐさま脱走。かくして健さんVS文太、東映最高峰の闘いが幕を開けるのだった…。

健さんと文太が並び立つ映画っていうのもそうそう無いはずですが、何故この映画があんまり評価されていないのでしょう?目立った論評っていうのをほとんど見たことが無い為、てっきり駄作なのかと思っていましたが、とんでもありません。さらに、この豪華キャストを演出したのが、深作欣二でも中島貞夫でも山下耕作でも、強いては石井輝男でもなくて、日活ロマンポルノからの出向、田中登監督なのです。でも田中監督のスケールの大きさ、引き出しの多さを確認出来たことはやっぱり嬉しいですけどね。
そもそもこの映画は、『(秘)色情めす市場』を見た東映の大プロデューサー・俊藤浩滋がえらく感激し、「うちで是非一本取ってくれ!」とお願いしたことが出発点らしくて、俊藤さんはエラい力の入り様で、健さんと文太のダブルキャストをその勢いで実現させてしまったらしいです。当初は実娘である藤純子まで引っ張り出そうとしていたという逸話も残っています。

とにかく触れておかなければならないのが、実録モノ初出演(たぶん)の健さんで、今回は義理も人情もあったもんじゃない、汚く泥臭いギャングのボスを熱演します。あくまで僕の主観ですが、エラそうに言わせて頂くと、ギャップとか違和感をもつことなく楽しんでいる印象が強かったです。この時期の健さんといえば、もう押しも押されもせぬ大スターであったわけですが、当時の芸能記事を紹介しますと「泥まみれにもなれば、ファックシーンも演じます。高倉健がスター然とした御大芝居から脱却、野良犬スター宣言をされ注目される」(1975・2・25 スポーツニッポン)さらにキネマ旬報1975年5月号インタビューでも、女郎屋通いやケンカの体験を語り、「僕がファックシーンをやるから、目新しい話題になるのはおかしい。」とまで発言しています。たぶん少々上品過ぎるというか、いい人に納まり過ぎたそのイメージからの脱却を狙っていたのでしょう。実録モノもちょうど絶頂期だった時代ということもあり、より一層意欲的になったに違いありません。ちなみにこの映画では、何故かファットママこと絵沢萌子と絡まされています…なんでよりによって、恐らくは健さんの記念すべき初カラミの相手がこの人なんでしょう(笑)
ちなみに文太だってカラミの相手は、これが映画デビューの泉ピン子です(爆)

さっきから健さんと文太の両雄ばかりクローズアップしてますが、この映画は末端の人々の背景も細やかに描写しています。日本に生まれ、日本に育ち、スパイだと自分の父親を朝鮮人に殺されながらも自分が朝鮮の血を引いていることに悩む蓮司さん。子供のために一旦はギャングから足を洗う邦衛。母親・菅井きんにどれだけ尽くしてもギャングであることを責められ、親子関係に悩む伊藤敏孝。このような救われない人々への温かい眼差しは、ロマンポルノで田中監督が一貫して描いてきたものが出ているようで、微笑ましくもあります。
女性の描写も、最初は東映カラーに染まった粗雑な扱い方に思えましたが、健さんに思いを寄せながらもかなわない、寡黙なギャング団の紅一点・真木洋子に虚しいまでのメロドラマを感じて、やっぱり“らしさ”は出ていたのだと思いました。この辺は、東映出身の監督ではおざなりにしてしまうところかもしれません。丹波御大を特に何もさせずに、中盤辺りでブチ殺してしまうなど何の遠慮も無さげな所も良いですね(笑)大滝秀治のセコいだけで特に何もしない中国ヤクザも意外な味があります。

バイオレンスも迫力満点。前述のエンコ潰し、爪剥ぎリンチ、戦争映画テイストの銃撃戦、そして酒屋の配達のオッサンまでも蜂の巣状態…。クールな殺戮マシーン、夏八木勲がパンキッシュしてます。とにかく、健さん、文太、田中登監督という奇跡的なコラボレーションが生んだ奇跡的な傑作だと思うのですが、ほとんど評価されていない・・・というかこれほどまでに知られていない、いまだDVD化もされていないというのはどうなんでしょう?


 『神戸国際ギャング』                            Koube 
  監督:田中登
  脚本:松本功、山本英明
  撮影:赤塚滋
  音楽:青山八郎
  出演:高倉健、菅原文太、夏八木勲
      田中邦衛、石橋蓮司、大滝秀治
      丹波哲郎、真木洋子、和田浩治
  (1975、東映京都)

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コメント

いやほんと、この映画を20年ほど前に見ましたが、間違いなく傑作でした。おっしゃる通り、脇役にも目が届いていてそれぞれに活き活きと良い。

投稿: | 2009年6月23日 (火) 10時30分

コメントありがとうございます。
賛同してくれる方がいらして、私も嬉しい限りです。

投稿: りょう | 2009年6月29日 (月) 21時08分

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