日本映画の感想 『やくざ残酷秘録 片腕切断』

安藤昇が、モノホンのやくざ(正しくは愚連隊)だったことは有名ですが、そんな安藤昇がモノホンならではの人脈を駆使して撮りあげた、モンド・ドキュメンタリーの怪作。よくもまぁ、こんな映画が製作・公開できたものだとある意味感心してしまうほどに、ブッ飛んだ危ない内容です。捕われの身の男が、今まさにタイトル通り片腕を切断されんとしているポスターは明らかなヤラセですが、本編にはヤラセかリアルかがわからないシーンも多数あります。再現・ヤラセ・実写の融合バランスが素晴らしいです。当時としては珍しい、エロではない成人指定。確かに子供に見せられる類の代物ではありません。

シャブを打った若い衆が兄貴分らしき男からボコボコにされるシーン、賭博の現場、ショバ割り、本業の方々のインタビュー、シンナー中毒者等、滅多にお目にはかかれないであろう危ういシーンの連続攻撃。冒頭からモノクロ映像が続きますが、パートカラーの映画です。そのカラー部分は、何故か指つめの場面。ちなみにドスは使用せず。ノミを小指の上にあてて、助手(介錯人?)が、上から金槌を一気に振り落とします。怖。

続いては、トルコ(現ソープ)嬢とそれにくっつくヒモの生態を暴くというコーナー。カメラは彼らの尾行を開始。そしてついにベッドインの隠し撮りに成功する。ただし、「どこから撮ってんだ!?」と言わんばかりの望遠レンズ使用で、画像もかなり粗い。しかもモノクロだから、一体何が行われているのか確認が出来ない程に見づらい。どうやら トルコ嬢とヒモの情事は順調に進んでいるようですが、何が行われているかはほとんど確認不能。ここで安藤氏のナレーション。「おっと、映倫の許可が下りたのはここまでだったな・・・フフフ、ここから先、みなさんにお見せ出来ないのは非常に残念である」などとうそぶいてみたり、はたまた、競輪を引き合いに出して、「私的なバクチは禁止されているのに、公営ギャンブルのテラ銭は高過ぎる」などと恨みがましく文句を言う、マイペースな安藤氏のナレーションには爆笑します。


 『やくざ残酷秘録 片腕切断』                      Zankokuhiroku
  企画:安藤昇、椎塚彰
  構成:安藤昇、椎塚彰
  撮影:椎塚彰
 (1976、安藤企画・東映)

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日本映画の感想 『野獣死すべし』

とにかく、優作の変貌ぶりにまず驚かされます。ひょろひょろとした手足、痩せこけた頬、青白い肌・・・なんでも本作のために過酷な減量を敢行したり、奥歯を4本抜いたり、極めつけは原作の主人公と比べ背が高すぎるので、足の骨を削ることを真剣に医師に相談していたという(リム出版「蘇る松田優作」参照)から驚きです。ここまでしただけあって、本作の優作はまさに鬼神、或いは悪魔。見ている者の魂を終始、揺さ振り続けます。

アクションもいつものようなしなやかさとは程遠い所にあります。例えば冒頭のシーン。土砂降りの中で刑事を刺殺し拳銃を奪うのですが、刑事の方が武道の心得でもあるのでしょう、主人公・伊達が一発で狙って仕留められるような相手ではない。そこで、まず相手の足を傷つけて動きを奪い、次に急所を確実に狙う。いつものように華やかでもしなやかでもないですが、実にリアル。銀行強盗のシーンにしても、綿密な計算の割に本番は鮮やかとはいきません。手間取った末、結局、伊達と相棒の鹿賀丈史は大量殺戮をしてしまう。このように、本作での優作はいつものスーパーマンとは違い、あくまで生身の人間として描かれます。これで、『戦場カメラマンとして戦地を渡り歩き→危険に遭遇し、ふと人間を殺してしまった→そのとき言いようのない快感に襲われた→もはや戦地に自らを置かなければ生きていけない』という人物像は際立ちます。

もはや、過激な暴力の場に自分の身を置かなければ気が済まない伊達は、人間的感情を排することにひたすら努め、自分を殺人兵器に仕立て上げることにのみ喜びを見出します。そんな彼の唯一の社会との接点と言えば、クラシック音楽。だからこそ、音楽好きのOL(小林麻美)は、主人公と社会との重要な架け橋になるかもしれない存在でした。しかし、結局はヒロインたる存在をも簡単に射殺してしまう伊達。彼女を殺すことで、完全に社会との接点を断ち切ったわけです。ラスト、女に油断して結局、致命傷を負わされることとなる『蘇える金狼』の朝倉とは対称的です。

東北への夜行列車内、ロシアン・ルーレットをしながら、伊達が刑事にリップ・ヴァン・ウィンクルの寓話を話すシーンは映画史に残るであろう、緊迫感溢れる名シーンだと思います。この時の刑事役・室田さんの汗の量が尋常じゃありません。


 『野獣死すべし』                               Shisubeshi
  監督:村川透
  脚本:丸山昇一
  撮影:仙元誠三
  音楽:たかしまあきひこ
  出演:松田優作、鹿賀丈史、小林麻美、
      風間杜夫、岩城滉一、阿藤海、
      泉谷しげる、佐藤慶、根岸季衣、
      青木義朗、山西道広、室田日出男
  (1980、東映・角川春樹事務所)

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11月1日の重賞予想、狙い目

東京11R 天皇賞(秋)(GⅠ 2000芝)

◎ 8 キャプテントゥーレ

東京は今週からBコースに変更。土曜のレースでは、外伸びが顕著だった前週とはうって変わり、先行、内差しが目立った。内馬場が良いと内に控える馬はがっちり態勢をキープ、直線までじっと動かない。外から捲くるような馬も居なくなる為、流れは落ち着く傾向にある。エイシンデュピティやコスモバルクが逃げるにしても、明確な逃げ宣言は打ち出しておらず、案外、けん制の仕合で流れは落ち着くのではないだろうか。Sペース向きの瞬発力に秀でた馬か、前々の競馬でSペースを制している馬を狙いたい。前者の代表格がウオッカ、カンパニー、スクリーンヒーロー、マツリダなど。そして、これらの馬に先行してアドバンテージを取れる可能性のある馬として、キャプテントゥーレに期待したい。とにかく、先行して崩れず堅実に走るので買い易い馬だ。皐月賞から休養明け以降も堅実に駆けている。そして、何より魅力的なのがその血統組成。アグネスタキオン産駒は、去年のダイワスカーレット、ディープスカイ、一昨年のアグネスアークと3頭出走して、3頭とも馬券圏内。そして母父が府中の鬼、トニービン。ウオッカ、シンゲン以上に東京巧者の可能性がある。

8単 20%
8複 80%

狙い目
福島6R 3歳上500万下(1150ダ)

◎ 4 ヴィーヴァサルーテ

前々走の札幌戦が土曜東京の1000万下を快勝したフリーダムエアーから0.3秒差の3着。前走が現1000万下で上位人気を背負うウインキングストンから0.1秒差の3着。500万脱出は時間の問題のヴィーヴァ。ローカルのダートで確実に勝ちを拾いにきた。ダートの方が前目の位置をスムーズに取れるようだし、ここは相手関係にも恵まれた。単勝で大きく勝負したい。

4単 100%

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10月31日の重賞予想、狙い目

京都11R スワンS(GⅡ 1400芝)

◎ 1 マイネルレーニア

高速馬場が続く京都開催。元来、スプリント色の濃い条件で、1200Mを得意とする馬か、強力な先行馬を狙いたい。昨年度当レース覇者のマイネルレーニア本命。迷い無く逃げの一手が打てる最内枠を引き当てた。うるさい存在はスプリンターのショウナンカザンくらいで、あとは差しタイプ。スムーズに逃げれば面白い。近走の成績は冴えないが、一応単騎逃げが打てている。こういう人気を落としたところこそ、逃げ馬の買い時。

1単 20%
1複 80%

09年重賞成績 -5,200円(回収率91.29%)

狙い目
東京10R 紅葉S(1600万下 1600芝)

◎ 3 アロマンシェス

昇級戦となるが、前走、上総特別を上々の時計で制して臨むアロマンシェス本命。元々、中山より東京が合うタイプ。夏場から好調維持。ここは相手が揃ったが、一発を期待したい。

3単 20%
3複 80%

09年狙い目成績 -9,630円(回収率82.10%)

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日本映画の感想 『パンドラの匣』

太宰治作品の映画化。なんでも今年は太宰生誕100周年にあたるらしく、今年から来年にかけていくつかの原作映画化が予定されています。太宰治作品の中ではそれほど有名では無い「パンドラの匣」。僕も原作は未見です。宣伝文句はずばり「太宰作品の中でも一番ポップな青春小説」。

結核療養所で過ごすこととなった主人公・ひばりの恋愛模様が本作の主要テーマ。結核療養所といえば、暗いイメージがつきまといますが、本作ではそういう部分を出来るだけ排除して、あっさりとした演出に終始します。原作を知らないので比較は出来ませんが、もう少しひばりやその他、療養所で過ごす人々の屈折、劣等感を押し出しても良かったのではとも思います。太宰作品の持つ退廃的な部分は出来るだけ抑制したいという意図はよくわかりますが、とにかくこの時代にお国の為に何の奉仕も出来ず終戦を迎え療養所に入るということは、人として死んだも同然の扱いを受けることと等しいでしょう。実際、療養所に入る前のひばりには、自身の身体を痛めつけてまで意味の無い農耕に従事したり、水中に顔を極限まで埋め続ける等、人生に悲観している描写がある。しかし、療養所に入った後は、そこでの生活をあっさり受け容れる。むしろ、そこに住む愉快な仲間たちや可愛いナース達との療養所生活を積極的にエンジョイしている。心機一転、人として生まれ変わるのだということを「新しい男になる」という表現で決意表明してみせるひばりですが、そこに至るまでの心情変化やきっかけが一切描かれていないので、この療養所生活前後の振れ幅の大きさにはちょっと面食らいます。ここら辺り、原作ではどうなっているのかわかりませんが、結核を患っているからこそ生じるジレンマは作品としての大きな骨格と成り得るはず。後半で申し訳程度に患者仲間の死が描かれますが、基本的にはそこをスッポリと取り除いているものですから、やっぱり、話として薄っぺらな印象は否めません。

キャスト陣。
主人公・ひばりを演じる染谷将太君は良かった。若い頃の郷ひろみのような可愛い顔立ちですが、そんな顔立ちとはミスマッチの低音の声質で語られる、朴訥としたモノローグにはコクがあります。着物の上からコートを羽織りシルクハットを被って野原に佇む、なんてショットもよく決まります。この子は伸びるだろうと思って検索してみたら、なんと、ドラマ・相棒シーズン1で「目撃者」という、小学生が計画的殺人を企て実際にそれを実行し成功するという衝撃的なエピソードがあるのですが、そこで犯人の少年役をやっていた子なんですね。この年齢にして卓越した演技力にも納得です。
窪塚洋介は何年経っても、マンションの高層階から飛び降りて生死の淵を彷徨っても、変わりませんね。良い意味でも悪い意味でも窪塚クンのままです・・・これ以上は書きません。
仲梨依紗演じるナースは小悪魔的で、キャピキャピとしたブリっ子キャラです。これはこれで良かったとは思いますが、慎ましやかでストイックな戦前教育において、こういう女の子キャラが造型されるとはとてもじゃないが思えません。
主人公・ひばりの憧れの存在として年増のナースを演じるのが芥川賞作家の川上未映子です。昔から、映画に出る文化人というのはよく居ました。野坂昭如や三島由紀夫、横尾忠則などもよく映画に出てましたかね。だいたい、こういう人たちは映画に出て演じるというよりかは、その人の持つそのままのキャラでインパクトを与えていたという印象が強いので、特別出演的な域を出ていなかったのですが、そういう意味ではこの映画での川上さんは素晴らしいです。見事なくらい作品世界に嵌ってますし、演技の稚拙さなど微塵も感じさせません。或いはこの人の持つ“素”がそのまま出ているだけなのかもしれませんが、それを堂々と表現してみせるというのも一つの才能でしょう。


 『パンドラの匣』                           Pandora_3
  監督:冨永昌敬
  脚本:富永昌敬
  撮影:小林基己
  音楽:菊池成孔
  出演:染谷将太、川上未映子、仲梨依紗、
      窪塚洋介、ふかわりょう、小田豊、
      洞口依子、ミッキー・カーチス
  (2009、『パンドラの匣』製作委員会』)

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