アメリカ映画の感想 『イングロリアス・バスターズ』

これを見る前に是非とも『地獄のバスターズ』(1978 イタリア)は見ておきたかったんだけれども。諸事情でそれは叶わず。

第1部で描かれるナチ親衛隊の腕利き“ユダヤ・ハンター”ことランダ大佐の粘着質な詰問と容赦ない銃撃、第2部におけるアパッチの末裔、レイン中尉(ブラッド・ピット)率いるナチ残党の頭皮剥ぎ。ここで既に、この映画が何Basterds002_3 のメッセージも持たない戦争映画であることがわかる。頭皮剥ぎ、バットで撲殺、げんこつで窒息死、銃痕に指突っこみ、首をかっ裂く、締め付ける・・・戦争を賛美するわけでも無く、反戦を訴えるでも無く、ひたすら命(タマ)の取り合いにのみ主眼が置かれている。 例え、ヒトラーやゲッペルスやゲーリングやボルマンといったナチスの大物が一網打尽に爆死しようが、刺激的で面白ければそれでOKだ、という映画。B級精神に溢れている。これを見て、「歴史の歪曲だ」とか「グロくて下世話だ」などと思う人は、たぶんB級映画が生理的に合わない人なので、日頃、文芸映画や宮崎駿のアニメ映画などを観て、叙情やファンタジーに浸るべき。

映画そのものはまずまず面白かったが、ランダ大佐、レイン中尉の変態性が段々と尻すぼみになっていったのは残念。例えば、ランダ大佐は連合軍のスパイとなったドイツ女優をもっとインモラルにいたぶるべきだったし、レイン中尉は頭皮のみならず全身の皮を剥ぐべきだったし、ペニスを切り落としてもよかったわけである。要するに針の振り切れ具合が中途半端。
本作に限らず、タランティーノの映画についてはいつも思うことなのだが、ここら辺りに、大量生産の中でルーティンさを回避するべく、変化やバリエーションを織り交ぜた結果、偶発的に産み落とされた奇形としてのB級映画ではなく、タランティーノが作為的に仕掛けた“テイストがB級なハリウッド映画”としての限界点を感じてしまう。
ハリウッド資本で作られた映画であれば、ある程度、万人受けさせるが為の予定調和は必要だ。それでもタランティーノは頑張っている部類。『キル・ビル』など、仁侠映画やカンフー映画やゾンビ映画の元ネタがわからない人間からしてみれば何の面白味もない映画だと思っているので、何故、あれがヒットしたのかわからなかった。タランティーノ作品は、そういうマニアック志向とポピュリズムの狭間で常に迷走している感がある。

ところで、この映画の封切り4日間限定、返金キャンペーンの結果が気になる。アメリカではかなり興行成績は良かったとか。ちなみに自分が映画館に足を運んだ時期は公開3週目の土曜昼で7~8割程度の入りだった。


 『イングロリアス・バスターズ』                      Basterds
  監督:クエンティン・タランティーノ
  脚本:クエンティン・タランティーノ
  撮影:ロバート・リチャードソン
  出演:ブラッド・ピット
      クリストフ・ヴァルツ
      イーライ・ロス
      メラニー・ロラン
      ダイアン・クルーガー
  (2009、アメリカ)

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アメリカ映画の感想 『チャーリーとチョコレート工場』

壮大なスケール感に、小粒だけどピリッと辛いブラックユーモアが生き生きとしている。子供向けなのか、ストーリーが単純明快で善悪がはっきりしていてラストはこんなにも簡単にいくものなのか、とちょっと拍子抜けの感もする。
しかし、このラストの家族モノのお話は映画としてうまくまとめるためで、工場見学に付随したモノだとしたのが非常に好印象。あくまでも工場見学にウエイトを置いたティム・バートン演出には賛同である。

天才orバカの紙一重なウィリー・ウォンカの脳みそを覗くような工場見学はとても興味深く面白い。そして、ピリッ辛い小粒のユーモアたちが異常に後を引く。
夢のような楽しい時間、空間の合間合間に、思い切りの皮肉を見せられるから余計に響くわけである。そういう意味では、ファンタジーの裏側に残酷な意味を込めるグリム童話と似ているような気もする。ウォンカのチョコレート工場に次々と虐待されていくおマセな子供たちの姿は、大人たちの言う事をまったく聞かない最近のガキどもへの苦言?精神的に大人に成りきれていないウォンカの姿もまた、成熟しない大人たちへの苦言とはとれないか?

例によって、ティム・バートン作品でのジョニー・デップはエキセントリックな役どころを楽しそうに演じている。元祖ドラキュラ俳優、近年でも『ロード・オブ・ザ・リング』等で精力的な活躍をみせるクリストファー・リーが今回はウォンカの父親役を温かに好演している。


 『チャーリーとチョコレート工場』                    Charlie
  監督:ティム・バートン
  脚本:ジョン・オーガスト
  撮影:フィリップ・ルースロ
  音楽:ダニー・エルフマン
  出演:フレディ・ハイモア
      ジョニー・デップ
      ヘレナ・ボナム・カーター
      クリストファー・リー
      デビット・ケリー
  (2005、アメリカ)

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アメリカ映画の感想 『トラフィック』

トラフィックとは麻薬物流経路のこと。例えば、『フレンチ・コネクション』“コネクション”という言葉と同義である。3つのエピソードにそれぞれ主要キャラクターが居て、それらは同時進行して最後まで交わることがない・・・というハリウッド発の娯楽映画としては異例なスタイル。これは、アメリカ合衆国における麻薬流通、麻薬汚染の実態を丸ごと捉えたいというソダーバーグの強い意思によるものだろう。

3つの並行するストーリーには終幕においてそれぞれ一応のひと区切りがつくが、それらは決してハッピーエンドではないし、アンハッピーエンドですらない中途半端なもの。この映画においては「最後に悪人が死んでメデタシメデタシ」とはならないし「正義の密告刑事が暗殺される」といった類の衝撃的な結末も用意されない。だって、現実はそんなに甘くもないし簡単でもないからだ。ソダーバーグがこの映画で発しているメッセージはただひとつ。それは「あなたが今、目にしているのは絵空事ではない」というもの。そういう意味で、これは娯楽映画とは言えない。同じ麻薬Gメンものの『フレンチ・コネクション』あるいは『セルピコ』や『フェイク』のような娯楽性を期待した人は期待はずれに終わるだろう。

だが、おっかないヤクザの兄さんのとこへ行かずとも、そこらのクラブで高校生が気軽にドラッグを買えてしまうこの国の現実を知る人にとっては見応えのある映画・・・って日本でも最近はこんなもんだよなぁ。


 『トラフィック』                               Traffic_3
  監督:スティーブン・ソダーバーグ
  脚本:スティーヴン・ギャガン
  撮影:ピーター・アンドリュース
  音楽:クリフ・マルティネス
  出演:マイケル・ダグラス
      キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
      ドン・チードル
      ベニチオ・デル・トロ
      デニス・クエイド
  (2000、アメリカ)

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日本映画の感想 『沖縄10年戦争』

本土復帰直後の沖縄が舞台だけに登場人物たちが皆、本土に対する劣等感や嫌悪感を露にしたり、海洋博覧会が失敗に終わったりとネガティブなイメージが先行している。そのためかどうかはわからないが、沖縄本土でのロケ及び公開は中止にされたという作品。内容そのものも、なにか難解な印象を残す部分が多くて、トラブルのダメージをモロに受けてしまっている感じ。やくざの抗争というよりかは、もはや戦争に近いテイストで重火器満載の肉弾戦を繰り広げるところが魅力だった『沖縄やくざ戦争』と比べ、本作は抗争の火種があまりにも短絡的というか子供じみていて、カリカチュアライズ満載の東映とはいえ、さすがにリアリティの無さがいちいち鼻につきます。これを見せれば「馬鹿にするな」と本当に沖縄の人は怒っていたのかもしれない。

連合のまとまりの無さと勝手に突っ走る若者に頭を抱える松方はあまり暴れないし、千葉も妻子持ちという設定のせいか『沖縄やくざ戦争』のキレには程遠い。そんな消化不良気味の主演二人に代わって、この映画では東映カラーにはそぐわない若手たちが意外な活躍をみせる。ここぞというときに限って必ず目がかすむパンチドランカー・にしきのあきらも周りの人間にとっては邪魔者以外の何者でもないが、節目では重要な鍵を握る役どころ。渡辺“お宅訪問”篤史もかなりのファイトぶりだし、笑点の座布団持ち・山田隆夫に至ってはその死に様が本作中ナンバーワンのドラマチックな描き方をされている。何故に末端中の末端やくざの死に様がクローズアップされるのか意味不明であるが・・・
他では相変わらず、小池朝雄御大の老獪ぶりとこの手の映画では珍しい、藤田まことの渋い演技は良かった。

とにかく、友情と対立の狭間で苦悩する松方・千葉の姿が描きたかったのか、本土対沖縄ヤクザの抗争を描きたかったのか、それとも末端やくざの破滅的青春が描きたかったのか・・・いまいちコンセプトが掴みにくい作品。


 『沖縄10年戦争』                             Okinawa10
  監督:松尾昭典
  脚本:志村一浩、松本功、大津一郎
  撮影:赤塚滋
  音楽:鏑木創
  出演:松方弘樹、千葉真一、小池朝雄、
      曽根晴美、にしきのあきら、山田隆夫、
      渡辺篤史、野川由美子、菅貫太郎、
      今井健二、佐藤允、藤田まこと
  (1978、東映京都)

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日本映画の感想 『沖縄やくざ戦争』

やくざ映画?否。どちらかと言えばもう戦争映画のテイストに近い。

とにかく、千葉真一がキレまくり。『仁義なき戦い 広島死闘編』の大友勝利も凄いが、こちらはその凄みに会得したての殺人カラテが加わって、さらに恐ろしいことになっている。冒頭のシーンでいきなり居酒屋を襲撃。手刀でビール瓶を割るわ、テーブル叩き割るわ、主人をボコボコにするわの大騒ぎ。しかも、その居酒屋が本土から来たチェーン店だ、っていうのが理由なのだから恐ろしい。
更に室田さんに対する仕打ちがこれまた酷い。自分たちの縄張りにほんのちょっと入りこんだだけの室田さん以下若衆数人。そこでしでかしたことと言えば、カキ氷を売っただけ。そんな可愛いシマ荒らしに対してなんと千葉は「ペンチでペニス落としの刑」を執行である。幾ら何でもやり過ぎ。狂い果てている。そして、幹部会の席で、ウイスキーをラッパ飲みしながら「戦争だ~いすき」の名台詞。ほとんど野獣と化している。ついでに子分の地井武男も実にイヤらしい男である。

そんな無茶苦茶過ぎる千葉に兄弟分・松方弘樹も遂に業を煮やす。千葉のために大阪の大組織まで詫びを入れに行ったのに、千葉から「本土のヤマトとつるみやがってェ~」と逆ギレされ、刺客・渡瀬恒彦&尾藤イサオを放つ。千葉も千葉で、昼間には松方に対してそんな態度をとっておきながら、夜になると「チョーデイ(兄弟の意)と呑みたくなっちったheart」と可愛く再登場。野獣性に多重人格まで被さるのだから、まったく面倒なことこの上ない。でも時すでに遅し。物語中盤で千葉真一はあえなく絶命する(この絶命の仕方がまたワイルド。最後は逆上がりしながら息絶える)。

中盤以降、松方や渡瀬といった面々が千葉のキチガイキャラを引き継いだかのごとく暴れまくるのだが、やっぱり千葉真一のインパクト強過ぎてイマイチおとなしく見えてしまいます。「戦争映画のテイストに近い」と冒頭に述べたが、とにかくこの映画、殺しあいばかりやっている。かといって、決して残酷なカラーの映画でもない。むしろ、沖縄のハイビスカスのように華やかな映画。沖縄だからってやくざの幹部会で全員がお茶の代わりにコーラを飲んでいる、というお馬鹿な感じがナイスな映画でもあります。


 『沖縄やくざ戦争』                             Okinawa
  監督:中島貞夫
  脚本:高田宏治、神波史男
  撮影:赤塚滋
  音楽:広瀬健次郎
  出演:松方弘樹、千葉真一、渡瀬恒彦、
      新藤恵美、ひろみ麻耶、地井武男、
      成田三樹夫、梅宮辰夫、尾藤イサオ、
      室田日出男、織本順吉、片桐竜次
  (1976、東映京都)

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